2008年 07月 23日
芸術家の眼力 |
東京に住んでいたころ、良く日展に出かけていた。
文化の日になると必ず足を向けていたものだ。
日本画、洋画、書、彫刻、工芸と殆どの芸術作品を網羅している上、
各分野ごとに2~300点は出品されていたと思う。
中でも、日本画(顔料を膠で溶く絵画)を良く鑑賞した。
現実に目の当たりにすると判るのだが、画はでかい。
縦3×横4mなんてのも少なくなく、視界を覆う迫力に圧倒されてしまう。
だが逆に、緻密に描かれた小品も捨てがたい。
ある年、数十センチ四方の比較的小ぶりの作品と出会った。
夜明けの港にコンテナ船が浮かんでいる。
荷を積み込み、これからまさに船出しようとする様子を活写していた。
作品名は「出航」。
写実的で美しい作品だなあ、と見入っていた事を覚えている。
そこへ、すたすたと大股で現れた和服の男性。
傍らに秘書らしい女性を従えている。
そう、イメージで行けば、美味しんぼの海原雄山。
あちらこちらの画を見ながら、秘書の女性に何か呟きこちらに近づいてくる。
ついに私の隣まで来て、くだんの貨物船の画を一瞥した。
とたんに、「見てないな」と言い残し、その場を立ち去った。
なんのことやら判らない。
ボクは言葉の意味を考えながら画を見つめなおした。
そう、かれこれ20分もその作品の前に立っていただろうか。
ようやくボクにも見えてきた。
船には喫水線というものがある。
海に浮かんだとき、船の側面の海面にあたるラインだ。
問題の「出航」では、この喫水線がかなり下にあり、船が浮かび上がって見えた。
つまり空荷の状態の船なのだ。
出航で積荷が満載の描写なのに!!
画家が実物を見ず、想像で描いたことを一目で見破ったその大家(?)は、
それを「見てないな」と表現し、評価に値せず、と瞬時に判断したのだ。
プロの眼力の何と鋭いことだろう。
数十年の経験と修練のみがそれを可能とするのだろう。
どんな職業であっても、そのような技量は成立するのだ。
だがボク自身はどうか。
果たして経験年数に相応しいプロのチカラを発揮する自信はあるのだろうか?
文化の日になると必ず足を向けていたものだ。
日本画、洋画、書、彫刻、工芸と殆どの芸術作品を網羅している上、
各分野ごとに2~300点は出品されていたと思う。
中でも、日本画(顔料を膠で溶く絵画)を良く鑑賞した。
現実に目の当たりにすると判るのだが、画はでかい。
縦3×横4mなんてのも少なくなく、視界を覆う迫力に圧倒されてしまう。
だが逆に、緻密に描かれた小品も捨てがたい。
ある年、数十センチ四方の比較的小ぶりの作品と出会った。
夜明けの港にコンテナ船が浮かんでいる。
荷を積み込み、これからまさに船出しようとする様子を活写していた。
作品名は「出航」。
写実的で美しい作品だなあ、と見入っていた事を覚えている。
そこへ、すたすたと大股で現れた和服の男性。
傍らに秘書らしい女性を従えている。
そう、イメージで行けば、美味しんぼの海原雄山。
あちらこちらの画を見ながら、秘書の女性に何か呟きこちらに近づいてくる。
ついに私の隣まで来て、くだんの貨物船の画を一瞥した。
とたんに、「見てないな」と言い残し、その場を立ち去った。
なんのことやら判らない。
ボクは言葉の意味を考えながら画を見つめなおした。
そう、かれこれ20分もその作品の前に立っていただろうか。
ようやくボクにも見えてきた。
船には喫水線というものがある。
海に浮かんだとき、船の側面の海面にあたるラインだ。
問題の「出航」では、この喫水線がかなり下にあり、船が浮かび上がって見えた。
つまり空荷の状態の船なのだ。
出航で積荷が満載の描写なのに!!
画家が実物を見ず、想像で描いたことを一目で見破ったその大家(?)は、
それを「見てないな」と表現し、評価に値せず、と瞬時に判断したのだ。
プロの眼力の何と鋭いことだろう。
数十年の経験と修練のみがそれを可能とするのだろう。
どんな職業であっても、そのような技量は成立するのだ。
だがボク自身はどうか。
果たして経験年数に相応しいプロのチカラを発揮する自信はあるのだろうか?
by coolmoment
| 2008-07-23 00:03
| 芸術